オンラインを活用した 教育・学修支援—“学びを止めない”立教学院の取り組み—

2020/11/10

OVERVIEW

新型コロナウイルス感染症の拡大および緊急事態宣言を受けて、立教学院全体でオンラインや動画を活用した教育・学修支援を行っています。今号では、大学のオンライン授業導入について、情報戦略委員長の池田毅先生にお話を伺うとともに、小中高の対応・取り組みについてご紹介します。

オンライン授業の全面実施に向けて早い段階から準備に着手

立教大学では新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、学生およびご家族の健康と安心・安全を最優先に考え、2020年度春学期の授業開始日を4月9日から同30日に変更し、全科目をオンラインで開講しました。秋学期は引き続き原則オンラインで開講し、一部の科目については感染防止策を十分に講じた上で対面授業を実施しています。

オンライン授業の全面実施は過去に例のない試みでしたが、「感染拡大防止という大学の社会的責任を果たしながら、学びを止めないために最善を尽くしたい」という思いで、教職員一丸となって取り組みました。授業運営方法の検討に着手したのは、2020年2月。刻一刻と状況が変わる中で、3月初旬には全科目のオンライン化を想定すべきだと判断しました。急ピッチで準備を進め、3月中に授業マニュアルを整備して教員向けの講習会を開催。4月には、通信機器が品薄になった社会状況を受けて、学生向けにノートパソコンやモバイルWi-Fiルーターの貸し出しを始めました。4月中に授業を開始できたのは他大学に比べても早く、早期から全面オンライン化を見据えていたことが奏功したと考えています。

また、授業開始前の4月の段階で、各学部にオンライン授業検証チームを設置したことも、スムーズな導入につながりました。オンライン会議システムのZoomとGoogle Meetを用いて実際の授業を想定した検証を行ったほか、学部独自の講習会を実施したことで、教員同士がサポートし合う体制を構築できました。

より質の高い授業を目指して

オンライン授業配信中の様子

春学期は約5000科目をオンラインで開講。学期末の指定期間には、Webシステムを利用したレポート提出が約650科目で行われ、延べ7万8千人ものアクセスが集中しました。かつてない規模につき、サーバーダウンなどさまざまな事態を想定した準備を入念に行ったため、大きなトラブルはありませんでした。今回学内サーバーを増強したことに加え、以前からITインフラの整備に力を入れてきたことが実を結んだ形となりました。

さらに、授業では大学メディアセンターの学生アルバイトスタッフによる「配信状況確認サポート」を実施。学生スタッフが授業に参加し、「音声が聞こえない」「画面が表示されない」といった場合に教員に連絡する仕組みで、細かなトラブルにも都度対処しています。

このように安定した授業運営に注力する一方で、オンライン授業の「質」の向上に向けた取り組みも並行して進めています。本学の大学教育開発・支援センターが4月から運用している教員対象の「オンライン授業関連情報サイト」(ナレッジサイト)では、優れた授業事例を発信。「いかに授業を効果的に進めるか」「学生とどのようにコミュニケーションをとれば良いか」といったノウハウを共有しています。

春学期には全学生に2回アンケートを取りましたが、「通学がなく感染リスクが減らせるのはありがたい」「私語がなく集中しやすい」「対面授業のときより授業外の学習時間が確保できる」といった声がありました。もちろん一方では検討すべき点もあり、今後の改善につなげていきたいと思います。

学生生活全体をどのように提供していくか

授業以外の学生生活・キャリア支援等についても、各部署がオンライン会議システムや動画を活用した取り組みにいち早く着手し、拡充を進めています。さらに、授業で使用しているZoomは、課外活動などで自由に利用できるよう、全学生に有償ライセンスを付与しました。学生たちは、クラブ・サークル活動やボランティア活動、また友人とのコミュニケーション手段として、積極的に活用してくれているようです。

ウィズコロナの長期化が予想される中で、学生生活の充実をいかに図るのか、学生の居場所づくりをどのように行うかは大きな課題であり、引き続き議論を重ねていきたいと思います。同時に、キャンパスに足を運ばないことで、もやもやした不安や悩みを抱えてしまう学生のケアも不可欠です。そのため全学的な「学生ケア・ネットワーク」を組織し、学生の相談事例を学部学科や学生相談所などの関連部局の間で速やかに共有・伝達する仕組みを構築しました。これについても、さらに充実を図っていく予定です。

今回の取り組みを通して、オンラインを活用した新しい学びの形も見えてきます。例えば、移動の必要がないため、池袋・新座の各キャンパスで開講される授業を自由に履修できたり、遠方や海外に住む教員が授業を行ったり、さまざまな可能性が開けるでしょう。しかし、まずはウィズコロナを見据え、学びと学生生活をしっかり提供していくことが大学の使命です。難しい状況下ではありますが、できないと諦めるのではなく、「どうすればできるのか」と発想を転換し、これからも取り組みを進めていきたいと思います。
立教大学のオンライン授業導入に伴う取り組み
  • 学部単位のオンライン授業検証チームを発足し、独自の検証・講習会を実施
  • 大学・校友会の補助により、学生向けにノートパソコン・モバイルWi-Fiルーターを有償貸し出し
  • 授業時に、メディアセンターの学生スタッフによる「配信状況確認サポート」を実施
  • 教員間で授業ノウハウを共有するため、「オンライン授業関連情報サイト」(ナレッジサイト)を運用
  • 春学期中に学生アンケート(2回)、教員アンケート(1回)を実施
  • 授業以外の課外活動にも活用できるよう、全学生にZoom有償ライセンスを付与
など


オンラインを活用したその他の支援(立教大学)
  • 新入生向けオンラインオリエンテーションWebサイト開設
  • クラブ・サークル新歓用PV(プロモーションビデオ)公開
  • 各種キャリアイベント・個別のキャリア相談をオンラインで実施
  • 留学体験談の動画配信やワールドカフェ(日本人学生と外国人留学生の交流)などをオンラインで実施
  • 保護者向けに「オンライン教育懇談会」Webサイト開設
など

詳細およびその他の取り組みは下記Webサイトをご確認ください。

プロフィール/PROFILE

池田 毅

情報戦略委員長
総長室長
経済学部経済学科教授

いけだ たけし / 1998年九州大学経済学研究科博士課程後期課程修了。博士(経済学)。2008年立教大学経済学部准教授に着任、2012年より同教授。

立教新座中学校・高等学校

3月2日から5月6日まで休校措置をとり、6月15日からはオンライン授業を継続しつつ対面授業を再開しました。今後も生徒の健康を守ることを第一に考え、さまざまな対策を講じた上で、新しい日常における学びや課外活動のあり方を柔軟に検討し、実施していきます。

新しい授業形式に対応した環境づくりを—オンライン授業

オンライン授業(ホームルーム)

4月はオンライン授業スタートに向けた準備期間とし、各家庭の学習環境の調査やオンライン上での面談、授業内容の計画などに取り組みました。準備期間を経て、5月7日から7月11日までオンライン授業を実施。また、高校3年の卒業論文執筆用に図書の宅配貸し出しなどの学習支援も行いました。

オンライン授業準備期間中の動き
  • 4月9日 メールによるデバイス調査
  • 4月16日 生徒へG Suiteの導入を案内
  • 4月17日 アカウント情報を郵送


※Googleが提供するクラウドサービス

卒業式は校内放送で実施ー学校行事

入学式や校外研修旅行などの行事は、感染拡大防止の観点から中止しました。10月のS.P.F.(文化祭)は来校者を招いての開催を見送り、オンラインを活用したイベント実施を予定しています。

内容を変更し実施した主な行事(予定を含む)
  • 高校卒業式・中学校卒業式…卒業生と教職員のみが参加。校内放送で実施
  • 終業礼拝・終業式…校内放送で実施
  • 始業礼拝…5月7日のオンライン授業スタートに合わせて、オンライン上で実施
  • 活動発表会…S.P.F.(文化祭)に代わり、オンラインで課外活動の発表会を実施

6月から段階的に再開、7月から全部員が参加—クラブ活動

6月15日からの対面授業再開に伴い、クラブ活動も少しずつ再開しました。期末テスト終了後の7月19日からは、部員全員での活動を許可しました。

クラブ活動の実施状況
  • 第1段階:許可が下りた部から活動再開。生徒は保護者の同意のもとで参加
  • 第2段階:登校日にあたる生徒のみ(全体の半数)が参加。活動前に健康観察を実施
  • 第3段階:部員全員が参加。休日の活動も再開
  • 夏季休業中:合宿・遠征は禁止

感染防止に配慮し、6月から授業再開—授業再開

左:1学期期末試験時は、生徒の入構を記録し健康チェックを実施/右:分散登校時、昼食は教室の自席で静かに食べるように徹底された

6月4日に新入生が初登校し、6月15日からは全学年で分散登校がスタート。クラスの半数が1日おきに登校し、対面授業も再開しました。2学期(8月25日)からは、一斉登校・通常時間割に戻っています。

クラブ活動の実施状況
  • マスク着用を必須化
  • 健康観察表の提出
  • 教室・トイレ・手すり等の消毒
  • アクリルのついたてやビニールシートを設置
  • 蛇口を回転式からレバー式に変更
など


その他の取り組み

  • SNSを活用し、卒業式や授業再開後の生徒の様子を保護者に向けて発信
  • 5月11日から毎週、チャペルアワーをライブ配信
  • 受験生向けに「オンライン学校説明会」を実施

立教池袋中学校・高等学校

3月2日から5月17日までを休校とし、6月15日から分散登校で学校生活を再開。9月1日以降は、授業時間を通常形式に戻して一斉登校を行っています。ICTを活用した情報共有・発信、オンライン授業、学習支援など、さまざまな対策を講じています。

遠隔でもきめ細やかな学習支援を展開—オンライン授業

事前に各家庭のネットワーク環境をヒアリングした上で、5月18日から7月11日の期間はオンライン授業を実施。授業の内容・形態に合わせてライブ・動画配信を使い分け、課題の提出もオンライン上で行いました。一部の授業では、ライブ授業とは別に質問時間を設け、生徒の学びをサポートしました。

高校生は1人1台所有しているノートPCを活用

中学・高校の入学式を6月に延期—学校行事

入学式は6月に延期し、クラスごとに実施。体育祭、R.I.F(.文化祭)や中学3年・高校2年が参加する校外学習も時期や内容を変更し、実施を検討しています。

内容を変更し実施した主な行事(予定を含む)
  • 入学式…参列者を限定し、クラスごとに実施
  • 校外学習(中3、高2)…時期を変更して実施
  • 体育祭…時期を変更して実施
  • R.I.F.(文化祭)…オンラインで開催

特別時間割による対面授業の再開—授業再開

6月15日から分散登校がスタートし、22日からは対面による授業が再開しました(オンライン授業も継続して実施)。感染リスクを抑えることを第一に考え、8月8日の終業礼拝までハーフクラスでの分散登校を行いました。

主な感染防止対策
  • マスク着用を必須化、授業によってはフェイスシールドを使用
  • 冷水器の使用禁止
  • ごみの捨て方をルール化
  • 通勤・通学ラッシュを避けて完全下校時間を設定
など

感染予防対策など、学校の対応を定期的に発信—Web・SNSの活用

上:学校対応のまとめページ/下:オンライン授業の様子が分かるダイジェスト動画を公式Webサイト・SNSで発信

公式Webサイトに新型コロナウイルス感染症への対応をまとめたページを作成。オンライン授業のダイジェスト動画の掲載をはじめ、生徒・保護者に向けた情報などを随時更新しました。


その他の取り組み

  • クラブ活動は時間を短縮して段階的に再開
  • 公式Webサイトに受験希望者向けの特設ページを設け、教育の特長や入試概要についての動画を掲載。在校生による学校行事・クラブ活動の紹介動画も配信

立教小学校

通学に電車・バスを利用する児童の安全・安心に配慮し、政府の休校要請に先駆けて2月28日から休校しました(5月1日まで)。小学生は学年によって学習への取り組み方や家庭での過ごし方が異なるため、学年ごとの情報発信も強化しました。

動画配信によるオンライン授業

授業を録画し、オンライン上で配信

5月7日から6月14日までの期間は、動画配信によるオンライン授業を実施。授業は各家庭のネット環境を考慮して配信形式をとり、朝のHRは双方向で行いました。

双方向型でコミュニケーションをとりながら実施した朝のHR

双方向型でコミュニケーションをとりながら実施した朝のHR

分散登校で授業再開

6月15日から対面授業を再開。「密」を回避するため、分散登校を段階的に実施しました。7月2日からは給食を再開、7月20日からはクラス全員がそろって登校しました。


その他の取り組み

  • 4月7日、入学礼拝と始業礼拝の動画を配信
  • 児童・保護者向けのGoogleサイトを学年ごとに作成し、随時情報を発信
  • 1学期中および夏季休業中の学校行事は中止
※本記事は、『立教学院NEWS』Vol.36(2020年10月)の記事を再構成したものです。記事の内容およびプロフィールは、取材当時のものです。