パラスポーツを通して
「多様性」と「共生」を考える

立教小学校 × 立教大学オリンピック・パラリンピック支援研究会

2019/12/11

OVERVIEW

2019年6月21日、立教小学校において、6年生約120人を対象としたパラスポーツ体験会「車いすバスケを体験しよう!」を開催しました。体験会の目的や当日の様子について、立教小学校6年生学年主任の五十嵐潤先生、企画・運営をサポートした立教大学オリンピック・パラリンピック支援研究会代表の中村真博さんに伺いました。

パラアスリートとの出会いと実体験を「最初の一歩」に

五十嵐 6年生の児童は2020年3月に小学校を卒業し、東京オリンピック・パラリンピックを迎えます。注目度の高いオリンピックではなく、あえてパラリンピックについて一人一人が1年をかけて学びを深めて巣立ってほしい——そんな思いがあり、2019年度は「多様性・共生」を学年の年間テーマに据えました。まずはパラリンピックに関する調べ学習に取り組んできましたが、「実際に体験してパラスポーツを身近に感じてもらいたい」と考え、企画したのが今回の体験会です。

開催にあたっては、立教大学の東京オリンピック・パラリンピックプロジェクトに関わる職員や、立教大学オリンピック・パラリンピック支援研究会(以下、オリパラ支援研究会)の学生の皆さんの協力を得ました。

堀江航先生によるデモンストレーション。巧みな車いす操作に、児童たちから大きな歓声が上がった

中村 オリパラ支援研究会は、学生が主体となって東京オリンピック・パラリンピックを支援・研究する団体です。特に2018年度はパラリンピック支援に力を入れ、パラアスリート等を招いたシンポジウムのほか、大学のホームカミングデーでパラスポーツ体験会を開催してきました。今回はその経験を生かし、小学校の先生方と一緒に企画や当日の指導を行いました。

五十嵐 準備段階から意識していたのは、「この体験会がゴールではない」ということです。児童たちは、学習発表会、さらにお別れ会や卒業式での発表に向けて「多様性・共生」をテーマに学びを掘り下げていきます。体験して「面白かった」で終わるのではなく、新たな気付きや問いが生まれ、もっと知りたい、考えたいという探究心が芽生えるような一日になればという思いがありました。

中村 そのためには、まずパラスポーツやしょうがい者に対して抱きがちなイメージを変えたいと思い、パラアスリートとしてさまざまな競技で活躍されている立教大学兼任講師の堀江航先生をお招きすることにしました。私自身、大学1年の時に堀江先生の授業を通して、フランクで快活な人柄に触れて大きな刺激を受けた一人なので、きっと小学生の意識も変わるだろうと思ったのです。

多様性に目を向けて生涯にわたって学び続けてほしい

左/立教大学オリンピック・パラリンピック支援研究会の学生7人が児童をサポート  右/5人1組に分かれてのチーム対抗戦

五十嵐 当日は、堀江先生のデモンストレーションと講演会を行った後に、3クラスが順番に車いすバスケットボールを体験。最後に、学生の皆さんも交えて各クラスで振り返りを行いました。最初のデモンストレーションでは、堀江先生の機敏な動きに児童たちは驚いた様子で、場が沸きましたね。続く講演では、先生が生い立ちやパラリンピック出場時の経験を語られ、「多様性・共生」というワードにも触れてくださいました。あえて結論めいたことを言わず問いを投げかけてくださったことで、子どもたちの心に響いたように思います。

中村 車いすバスケ体験では、学生の指導のもと、基本操作の練習やシュート練習、チーム対抗戦を行いました。教室に戻ってからの振り返りでは、「しょうがいのある人や偏見について、これから考えていきたい」といった、体験そのものだけでなくこれからにつながる発言が多かったのが印象的でした。

五十嵐 私のクラスでは、「車いすバスケはしょうがい者と健常者が一緒にできるスポーツだと気が付いた」という意見もありました。違いはあるが、工夫すれば一緒にできることもある。この経験を通してしょうがいのある人と共に生きていく社会の可能性を感じ取ってもらえたらうれしいです。また、学生が別のパラスポーツを紹介してくれて、「他のパラスポーツを体験してみたい」という声も挙がっていました。

中村 児童からの質問コーナーもあり、研究会メンバーも良い勉強になったと思います。小学生と大学生が場を共有する、今回のような体験ができるのは一貫連携教育ならではの良さだと思いました。自分も小学生の頃に経験してみたかったですね。

五十嵐 今後は11月の学習発表会に向けて、一人一人が興味を持ったテーマを主体的に追究していきます。今後パラスポーツに限らず、しょうがいのある人が日々の生活の中で直面している問題にも関心を持ってほしいですし、高齢者やLGBTといった多様な個性や価値観にも気付いてもらいたい。それによって、社会や自分に対する新たな見方や考え方を得てほしいと思います。

中村 そうですね、今回堀江先生と出会い大きなインパクトを受けたと思いますが、パラリンピアンがしょうがい者の「普通」ではありません。この経験を最初の一歩として、日常生活において支援を必要とする、より重度なしょうがい者もいる、といったことにも目を向けてもらいたいです。

東京オリンピック・パラリンピック開催まで1年を切りましたが、立教大学は池袋キャンパス総合体育館ポール・ラッシュ・アスレティックセンターの室内温水プールをパラアスリートの練習場として提供しているほか、新座キャンパスの体育施設がブラジル選手団の事前トレーニングキャンプ地になります。私たちオリパラ支援研究会としても、立教ならではの支援の形を探りながら活動を続けていきたいと思います。

五十嵐 「多様性・共生」というテーマは卒業して完結するものではないため、生涯を通じて学び続けてもらいたいと思います。そして児童たちが池袋・新座の両中高、大学へと進学したときに、それぞれの場所で発信し、動きが学院全体に広がっていくことを願っています。

堀江 航 立教大学兼任講師

Comment
今回の車いすバスケットボール体験会では、小学校6年生の素直な反応、そして車いす操作技術の習得のスピードに大変驚かされました。6年生の年間テーマは「多様性・共生についての学び」とお聞きしています。引き続きさまざまな視点から学んでいただければうれしいです。この体験会を機に、多くの大会やイベントに参加していただき、2020年東京パラリンピックの会場を満員に、そして何よりもその後のパラスポーツの発展と共生社会の実現を期待します。

Profile/1979年東京都生まれ。日本体育大学在学中に交通事故で左足を切断。友人の勧めで車いすバスケットボールを始め、イリノイ大学留学中の2010年に全米大学選手権優勝。2018年にはパラアイスホッケーの選手として平昌パラリンピックに出場、車椅子ソフトボールでも日本代表として活躍するマルチアスリート。

立教大学 オリンピック・パラリンピック支援研究会

東京オリンピック・パラリンピックに関する知識や支援方法を学生が自主的に研究する組織として、2018年4月にスタート。
現在は、コミュニティ福祉学部の学生を中心に、約50人が活動しており、今回の体験会には7人のメンバーが参加。シンポジウムの企画・運営、パラスポーツ体験会の開催などの活動を行っています。
※本記事は、『立教学院NEWS』Vol.33(2019年11月)の記事を再構成したものです。記事の内容およびプロフィールは、取材当時のものです。

プロフィール

profile

左/五十嵐 潤
立教小学校 6年生学年主任

右/中村 真博
コミュニティ福祉学研究科 コミュニティ福祉学専攻博士課程後期課程1年次
立教大学オリンピック・パラリンピック支援研究会 代表