自ら答えを探し、学び合う立教小学校のICT教育

2020年度 プログラミング教育必修化に向けて

2019/06/18

OVERVIEW

2020年度より、全ての小学校でプログラミング教育が必修化されます。
全国に先駆けてICT教育を推進してきた立教小学校では、「情報科」の授業において2017年度からすでにプログラミング教育を導入し、先進的な取り組みを進めています。
同校の石井輝義メディアセンター長に、必修化の背景や、立教小学校におけるICT教育・プログラミング教育の今について伺いました。

「プログラミング的思考」を育む

情報化社会の進展に伴い、現在、世界および日本ではICTスキルを有する人材が大幅に不足しています。この課題を解決するため、すでに多くの国が初等教育からプログラミングを導入しており、「プログラミングを学ぶ」ことが当たり前の世界になりつつあります。こうした潮流を受けて、日本でも2020年度から実施される新学習指導要領で、小学校におけるプログラミング教育の必修化が定められました。翌21年度から、中学校、高等学校でも順次拡充・必修化が予定されています(図1)。

新学習指導要領によると、小学校段階のプログラミング教育の目的は、実際にプログラミング言語を扱うことではなく、「プログラミング的思考」を身に付けることにあります。プログラムを機能させるには、一つ一つ手順を踏んで、正しく、効率よくコンピュータに指示を出さなければなりません。その過程で養われる、筋道を立てて物事を考える論理的思考がプログラミング的思考です。多様な教科の中で、多様な手法でプログラミングを取り入れ、普遍的・本質的な「考える力」を育むことが今回の必修化の狙いなのです(図2)。

※ ICT=Information and Communication Technology/コンピュータやタブレット端末、インターネットなど情報通信技術の総称

「当たり前」を廃した教室から生まれる新たな学び

コンピュータ室での情報科の授業(4年生)。

立教小学校では早くからICT環境を整備し、2017年度にはすでにプログラミング教育を開始しています。まずICT教育については、2013年度よりiPad miniの導入を始め、現在は1・2年生が共有で使用、3年生以上の全児童が個人で所持しています。児童にとってタブレットはもはや特別な機器ではなく、英語科で自己紹介動画を撮影・編集したり、家庭科でレシピ動画を参考に調理実習をしたり、あらゆる教科で活用しているほか、家での予習・復習もiPad miniで行います。

そして本校独自の「情報科」の科目では、より高度な内容を学習できるよう、2018年4月にコンピュータ室を全面改装しました。
授業で1人1台使用できるノート型パソコンMacBook Proを用意し、デスクトップ型のiMac Proも12台設置。複雑かつ難易度の高い作業に取り組み、段階を追って次のステージに進むことができる環境を整えました。

さらに特徴的なのが教室全体のレイアウトで、固定の机と椅子を取り払い、好きな場所に座ったり、寝そべったりまでできるようにしています。コンセプトは、学校における「当たり前」から脱却すること。ICT機器を用いた主体的かつ対話型の学びを実現するには、従来とは全く異なる授業形態が必要だと考え、家でiPad miniを使うときのように伸び伸びと学べる空間を目指しました。私は最低限の指示しか出さないため、児童たちは座る場所や移動式の机を使うかどうかを自分たちで考え、分からない所があればお互いに教え合います。この教室での授業を通して、教師から答えを学ぶのではなく、ICT機器を使って自ら答えを探しにいく姿勢を身に付けます。

まずはプログラミングを楽しむ

上/思い思いの場所でリラックスしながら、互いに教え合う 下(左)/電子書籍作成ツールiBooks Authorを使い、各県の郷土料理について調べた資料をeBook化する 下(右)/専用アプリでプログラムを組み操作するボール型ロボット「Sphero SPRK+」

プログラミング教育については、現在情報科と英語科で導入しています。情報科では、プログラムを組んで「Sphero SPRK+(スフィロ・スパークプラス)」というボール型ロボットを操作する授業を2年生から実施。英語科では専用のアプリを使い、ゲーム感覚で学習します。プログラミング言語は英語(アルファベット)をベースにしているため、児童は英単語とプログラミングを同時並行で学ぶことになります。

Sphero SPRK+を使った授業では、プログラム通りにボールが動くのが面白くて仕方ないようで、過去には自ら調べてプログラムを書き換えるつわものもいました。プログラミングの楽しさを実感し、「もっとできるようになりたい」というやる気が湧けば、子どもは自然と勉強するものです。教える側としても、まずは自由に楽しんでもらい、児童自身の意欲や好奇心を引き出すことを大切にしています。

また、新学習指導要領では、実際にプログラミング言語を扱う学習は中学校からとされていますが、今後はそうした発展的内容も取り入れていく予定です。プログラミング言語はその名の通り「言語」であり、「文法」と「単語」さえ覚えれば書くことができ、その点では日本語や英語の学習と大差ありません。「学ぶ言語の選択肢の幅が広がる」という発想で、プログラミング言語の基礎に触れてもらいたいと考えています。

土台となる情報モラル

一方で、こうしたICT教育・プログラミング教育のベースとなる情報モラル教育にも重きを置いています。授業で強調しているのは、「できることでもやってはいけない」ということです。例えばiPadを使えばいつでも写真を撮れますが、どこでも撮っていいわけではありません。その意味では、通常のモラルと何ら変わりはないと言えます。一般的なモラルと情報モラルは決して別々のものではなく、両方を結び付けながら一体的に学べるよう指導を行っています。

立教小学校では、学校全体として児童主体の能動的な学習を推進しています。ICT教育・プログラミング教育においても、主体的な学びをさらに推し進め、これからのAI時代に生きる力を育んでいきたいと思います。

立教学院各校の取り組み

立教池袋中学校・高等学校
ICT機器を活用した双方向授業

  • 2018年度高校1年生より、タブレットPC「Surface」を1人1台使用
  • 電子黒板とプロジェクターを活用した授業
  • 校舎全域にWi-Fi(無線LAN)環境を整備
立教新座中学校・高等学校
情報化社会に不可欠な力を育む

  • ICT機器の使い方だけでなく活用法や考え方を学び、情報化社会に主体的に対応できる力を育成
  • 情報の授業にとどまらず、英語、理科などの科目でもICT機器を活用
  • 2019年4月よりCALL教室にiPadを導入
  • ※コンピュータを用いて語学学習を行う教室
立教大学・大学院
2020年4月、日本初のAIに特化した大学院を開設

人工知能(AI)に特化した大学院「人工知能科学研究科」(修士課程)を、2020年4月に開設します。機械学習・ディープラーニング(深層学習)を本格的に学べる国内初の大学院であり、文 系学部出身者や社会人学生を積極的に受け入れ、文理融合の学習・研究や社会実装を推進。学部の全学共通科目においてAIを学ぶ科目の開講を検討しています。

 

全学部生が履修可能な全学共通科目(予定) ※科目名は仮称

  • 人工知能入門/AI全体を概観する科目
  • 人工知能と社会/社会実装とAI ELSI
  • 人工知能最前線/大学院授業の人工知能最前線に関するトピックを抜粋して紹介
※本記事は、『立教学院NEWS』Vol.32(2019年5月)の記事を再構成したものです。記事の内容およびプロフィールは、取材当時のものです。

プロフィール

PROFILE

石井 輝義

立教小学校
メディアセンター長
情報科主任

いしい てるよし / 社会科教諭。立教小学校のICT教育プロジェクト委員会委員長を務め、ICT環境の整備に取り組む。
2015年、Apple製品を用いて先端的な教育を行うApple Distinguished Educatorに認定。