小大連携が生む、教育の新たな可能性

立教大学文学部教育学科教授 前田 一男 × 立教小学校教諭 奥山 貴規 × 立教大学文学部教育学科2年次 森 すみれ さん × 立教大学文学部教育学科4年次 前田 修 さん

2018/05/28

OVERVIEW

立教学院で小学校と大学の交流が正式な形で始まったのは1995年。年1回、小大の教員によって開催される「小大研究会」をはじめ、長い交流の歴史があります。
立教大学文学部教育学科の学生が、立教小学校の授業補助を担う「アシスタントティーチャー(AT)」は、2005年にスタート。学院全体では、2014年度から「学生授業補助者」の制度を開始しています。今回は、小学校でのATの活動についてお話を伺いました。

アシスタントティーチャーの始まり

前田  ATは、小学校の方から教育学科や体育会の学生に授業補助やその他の支援をお願いしたい、という要望からスタートし、すでに10年がたちました。

奥山 現在は、20名程の学生が毎日5〜6名ずつ、英語、図工、算数、担任体育、生活科、習字などの授業で補助をしてくれています。私が担当する算数の授業では、主に小テストの丸付けをお願いしています。授業をしている間に採点を終えて授業終了時に児童に返せるので、その日のうちにフィードバックできるメリットは大きいです。また、作図の個別指導など、教員一人だとなかなか対応できないことも、ATのサポートにより可能になっています。

児童にとってのAT

左から、森 すみれ さん、前田 修 さん

前田(修) 子どもたちはとても元気で、彼らと触れ合うことが私自身の学びのエネルギーになっています。図工では彼らの自由な発想に驚かされます。〝先生、見て!〞という児童が多く、作品を介してコミュニケーションをとっている感じですね。私は立教小学校の卒業生なのですが、当時、自分ではできなかったことが、ATの方に手伝ってもらうと上手にできて感動したのを覚えています。

 昨年は1年目で、子どもたちと接する際に戸惑うこともありましたが、考えすぎず、一緒に全力で過ごせば信頼関係が築けるのだと気付きました。歌ったり踊ったり、身体表現を通じて英語を身に付けるETMの授業では、恥ずかしがってなかなか手をつないでくれないのですが、強引にでも手を取って歌い始めると、一緒に楽しんでくれます。

奥山 ATが自分の作品に関心を持ってくれたり、肯定的な声を掛けてくれたりすることが子どもたちの創作意欲につながっていると思いますし、ATの存在が場を穏やかにし、子どもたちも落ち着きますね。ATは、長期間いる実習生のような存在でもあります。1年、またそれ以上の期間を子どもと接してくれる。親や教員とは違う距離感で成長を見届けてくれる存在がいるというのはありがたいし、とてもいいことだと思います。

変化と成長の機会として

左から、前田 一男 教授、奥山 貴規 教諭

前田  卒業生に「ATを経験して学んだことは何ですか」「教員になって、ATの経験が生きていますか」という質問をしてみました。「子どもたちとの接し方、関わり方、指示の出し方など具体的な場面を見たことで勉強になった」と〝技〞をリアルに学んでいます。一方、「先生がすてきで、そのいい面を吸収できた」「学生時代に目指す教員像をじっくり考えることができた」というように、関わる先生方の教育観や人間観、教師観、子ども観など、〝観〞の部分も学んでいます。教員になってから生きていることとしては、「子ども目線で考えることを学んだ」「自分の核を持つこと、規律とユーモアが両立しないと子どもはこちらを向いてくれないことを学んだ」など、教育についての〝やり方〞と〝あり方〞をセットにした学びの場にもなっているようです。

奥山 教員は多くの場合、誰にも見られることなく、40名の子どもと向き合います。そこにATが入ることで、第三者の視点が生まれる。だから、気が抜けません(笑)。自然と準備にも力が入るし、教え方や子どもたちとの向き合い方を見直す機会にもなります。

それぞれの未来へ

前田(修) 子どもと同じ目線で一緒に喜ぶ・楽しむなど喜怒哀楽を共有できる教員になりたいと思います。子どもたちは辛い日も楽しい日もある。それを理解し、気付ける教員になりたいですね。

 すべての子どもたちに平和を発信する人に育ってほしい。そのために、個性の違う子どもたちが自分の能力や才能を最大限発揮できる環境、クラスをつくれる教師になりたいと思います。

前田 教え・教えられる関係ではなく、これからは〝学び合う〞関係が求められています。教師と子ども、子ども同士、教師同士、小学校と大学といった学び合いのネットワークをどのように広げて深めていくか。そうした学び合いの中で、視野の広い柔軟な思考力と豊かな感性を持った人間をいかに育てていくのかが、立教学院としての一つの使命かもしれません

※本記事は、『立教学院NEWS』Vol.24(2016年10月)の記事を再構成したものです。記事の内容およびプロフィールは、取材当時のものです。