学校法人 立教学院

パイプオルガンが完成して

立教学院オルガン更新プロジェクトの回想と完成した楽器
立教学院教会音楽ディレクター/立教学院諸聖徒礼拝堂聖歌隊隊長/文学部教授
スコット・ショウ

 2002年、私が立教大学に赴任した時、池袋キャンパスの諸聖徒礼拝堂と新座キャンパスの聖パウロ礼拝堂にはパイプオルガンとポジティブオルガンが、それぞれに存在していた。一見、十分な環境に思えたが、実は多くの問題を抱えていた。池袋のベッケラートオルガンはバッハの作品を弾き得るネオ・バロック様式の楽器で、チャペルの礼拝音楽を支えるには不十分であり、オーバーホールの時期にあった。新座のヴァルカーオルガンは建物に対して規模が小さく、電気系統が頻繁に故障し始め、早急な対策が必須であった。
 立教学院オルガン委員会は、両方の楽器の状態について専門家に調査を依頼し、改善に向けていくつかの提案をした。数年間に及ぶ詳細な検討と協議の末、遂に両チャペルに新しいオルガンを設置することを決定したが、重要な課題が残った。「最も適した楽器」の選択である。
 立教学院の2つのチャペルが必要とする音楽とは、何か。第一に考慮すべきは、チャペルが属するアングリカン教会、それに連なる日本聖公会である。日本聖公会は立教創立者であるアメリカ人宣教師ウィリアムズ主教の伝道により、設立された。我々の出発点である聖公会の礼拝における、オルガンの最も重要な役割は、会衆賛美を支えることである。『日本聖公会 聖歌集』のほぼ半数が、19~20世紀初頭にかけて作られた英国及び米国の聖歌であり、新しい聖歌もこの時代の形式を踏襲したものが多い。オルガンは、何よりもこれらの聖歌を伴奏できる楽器でなければならない。加えて立教には、英国の大学チャペルの伝統を汲む充実した聖歌隊があり、95年の歴史を誇っている。週3回の礼拝に加え、特別礼拝や式典で奉唱している60名の聖歌隊員の音楽を支える楽器であることが不可欠だ。
 では、英国聖公会のオルガンとは、どんな響きを持つのか。一言でいえば、人の声を圧迫しない心地良い響きである。声と同じ高さの音色が多彩に揃い、高音は軽やかで、低音が充実し、豊かで深みのある、包み込まれるような響きである。スウェル・ペダルによって強弱の調節も容易で、ささやくような音色から堂々たるフォルテまで、オーケストラのようにスムーズに音量を変えることができ、伴奏する際の自在な強弱が可能である。この様式のオルガンは、残響の豊かな大きな空間にも、乾いた響きの小空間にも適しており、低い音域の16フィートに8フィート、4フィートのストップを重ねて音量を増すことも特筆すべきだろう。以上の理由から、イギリス・ロマン派様式のオルガンこそ、池袋チャペルに最適であることは明らかであった。
 新座チャペルの楽器については、より柔軟な選択が可能であった。幸い、オルガンにとって理想的なバルコニーが新たに設置され、豊かな残響空間に合わせた、フランス・ロマン派様式に決定された。早速、欧米のオルガン製造会社を視察に行き、多くの楽器について検討を重ねた末、イギリスのティッケル社とアメリカのフィスク社に依頼することが決議された。
 さて、両チャペルのオルガンが無事設置され、日々活用されているが、こうした選択においての長いプロセスをふりかえってみるのは感慨深い。目的に合った楽器を選んだのか?我々が理想とした楽器を製作してくれる最良の会社だっただろうか?これらの問いにティッケル、フィスク両社は真に応え、世界的クラスの楽器を創造してくれた事は実に喜ばしいことだ。
 池袋チャペルのティッケルオルガンは昨年9月から使用され、礼拝にも活用している。10数人の小さな集まりから、250人にも及ぶ歌声をもサポートでき、会衆によって歌われる聖歌や典礼音楽の意味が生き生きとよみがえる音色の豊かさを備えている。聖歌隊の視点から見ても、イギリス・バロック時代(パーセルやボイス)からラングやサムションなど20世紀の作品による礼拝のアンセム伴奏にも効果的である。その理由は、8フィートや4フィートのストップがそれぞれ個性的な質を持つと同時に様々なレジストレーションにもブレンドし得る広い選択肢を持っているためで、その結果、20数名の女声聖歌隊から混声50数名の大きな声量の伴奏が可能である。2013年11月に立教大学教会音楽研究所主催で行われた東京近郊にある大学のクワイア・フェスティバルでもオルガンが使われた。フェスティバルの参加者全員によるアンセムはヴォーン・ウィリアムス作曲“O how amiable”だったが、200人ものメンバーによる大合唱にも負けない力を持つ楽器であることが証明された。
 もちろん、礼拝で“伴奏する楽器” にとどまらず、今年5月に予定されている奉献コンサートでは、広範囲の時代の特色ある作品をティッケルオルガンで聴く事ができるはずだ。
 学院オルガニスト﨑山裕子氏がすでに礼拝でバロックから現代音楽を演奏し、イギリス音楽はもちろんのこと、バッハや19世紀のフランス音楽に至るまで、その作品を忠実に演奏し得ると証明している。その素晴らしい適応性と美しさには絶えず驚かされる。
 新座チャペルのフィスクオルガンは今年始めから使用されており、ティッケルオルガンが19世紀イギリス様式であるのに対して、19世紀フランス様式という事で類似している面もある。その時代、この2つの国のオルガンビルダーがお互いに影響し合っていても不思議ではないはずだ。しかし、全く異なる点もある。フィスクオルガンはフランスの大聖堂のオルガンの響きを思わせるようなパワフルな音を持ち、新座チャペルの広い空間を満たす。オルガニストはこの個性の強い楽器をどう操作するか、コンサートや礼拝時の会衆とのバランスを考え、印象的な音色を作る機会が与えられる。このオルガンを表現するとすれば、“情熱的で、大胆で、刺激的な楽器”と言っておこう。
 皆様がこの2つのオルガンの奉献コンサートを聴き、立教学院の様々な礼拝や行事で重要な役目を担っているオルガンを体感する機会を持たれることを切に願っている。

                             

< チャペルニュース2014年4・5月号に掲載 >

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