学校法人 立教学院

英語科教員研修会
第一回「英語教育における一貫と連携」

指定者質問1:西村正和(立教小学校教諭)

質問1

(1)青山学院小学校でスキットを英語活動の中心にすえている理由は何か。

(2)立教では、劇、歌、ゲーム等で英語は楽しいという感覚を持っていた小学生が、中学校の文字を中心とした学習に移行するとつらい英語になってしまうという傾向にあるが、青山学院では子ども達の意欲をどのように配慮しているか。

(3)小学校で英語を学んだ子ども達が、中学校に進んだ時にどのような傾向があり、中学校、高校から入ってきた生徒とどのような違いがあるか。

回答1

(1)小中高に限らずスキットの持つ効用のひとつに、Listening、Speakingという第一次伝達技能向上がかなり保証できることがある。しかしそれは、文法と切り離すことはできないため可能な限り両方を統合する必要がある。また、第2言語に触れて演技をすることは、第1言語しか知らなかった人に比べて世界観が違うといわれている。第2言語に接したために新たに発見できる自分というところに大きな期待ができるとすれば、時間がかかるかもしれないがスキットには言語教育的な意味があると思う。

(2)音声を中心にやってきたことを文字中心である中学校とどのように連携させるかについてであるが、青山学院ではもうそのようなことはしていない。この7年の間に、小学校教員と中学校教員がお互いの授業を担当し、相互交流を実験的に始めており、その担当者が音声をベースとしながら文字化を行っている。その比重が小学校と中学とでは異なっているだけである。

質問2

音声を中心とした文字化の実践例を教えてもらえないか。

回答2

実際に小学校で教えているわけではないが、今コンピュータを利用し始め、文法を使わない映像と音声だけのソフトを開発している。そして、聞けて言えるようになると、次には文字が必要であるということを理解していくのは5年生である。そこで文法的なものを教えることで後押しが可能になる。

(3)小学校で英語を学んできた生徒が中学校でどのようになるかは、なるべく早い段階で小学校教員と中学校教員が何らかの課題を設定して合同で検討することが必要である。青山学院では制度化に入ってきたが、一定期間相互交流をすることで教育がつながるようになる。

指定者質問2:初瀬川正志(立教池袋中学校・高等学校教諭)

質問1

立教は小中高が男子校であるため、青山学院と状況は異なると思われるが、中・高6年間のカリキュラムについて聞きたい。現在池袋中学校・高等学校は6年間を見据えたカリキュラムを模索中だが、外的な条件、教員サイドのエネルギー、組織的な問題等がある中で、青山学院ではどのような連携のカリキュラムを作ってきたのか。

回答1

大きなテーマであるが、形式から入っていくと身動きが取れなくなる。許されるのであるならば、中高を3-3制というつなげ方ではなく、カリキュラムからは2-2-2制で考えていくのがいいと思う。自分が以前にいた東大附属中高の一貫教育の原型が2-2-2制であり、子どもの発達をベースにして考慮した結果のひとつが2-2-2制であった。その中で自分が一番苦労したのは中3と高1の担任時であり、それてしまう生徒が多く出た。しかし、途中でそれた生徒の中にはやめてしまう者もいたが、大半は高1の前半に自力で戻ってきた。中3と高1が本当の意味で学びの場であり、教育の場であるということが保証されるのであれば、生徒は立ち直る可能性がある。生徒の発達と目標をどこに設定し、それをどう学校が保証するのかを考えていく必要がある。

指定者質問3:初瀬川正志(立教池袋中学校・高等学校教諭)

質問1

(1)立教新座中高では、立教小学校からくる生徒、受験で中学校から入ってくる生徒、受験で高校から入ってくる生徒がいるが、青山学院では、内部進学者と外部からの入学者との英語力の差にどう対応しているのか。

(2)大学進学時に英語での足かせ(ハードル)はあるのか。

回答1

(1)内部進学者と外部進学者の違いについては、4-4-4制となれば、数ヶ月間は外部進学者に対してバイパスのシラバスをつくらなくてはならない。しかし、高等部の教員によると、「高等部には入学試験での受験技術を身につけたものが入ってくるので、最初は彼等のほうが内部進学者よりよくできるケースもある。中高のつながりについては特にバイパスはいらない。」という。公立小学校で英語が始まると、その成果を中等部が受ける環境になるが、青山学院ではE-ラーニングで、3ヶ月から半年間セルフ学習でコンピュータの利用を考えている。現在、ソフトを開発しているが、この中で生きている理念はゲームである。15分間で30問であるが、このゲームのよさは、人と競い合うのではなく、ゲーム能力と人間のやる気との戦いであり、がんばるほど時間が短縮される。

(2)青山学院大学には6学部あり、文学部は6学科(約2000人)ある。しかし大学における横の流れは整っていないので、学部学科によって望んでいる英語力は異なり、文学部における高等部の最終的な英語の評点は10段階で8(5段階で4)である。

自由質問1:鳥飼玖美子(進行:立教大学異文化コミュニケーション研究科)

質問1

青山学院においては、学部によって附属高校から大学にあがってくる生徒の英語力への要求がばらばらであるということなのか。大学側が具体的に高校側に求める英語の到達度と到達目標はあるのか。また、その英語力には何か測る基準を設定しているのか。

回答1

青山学院では、昨年まで、渋谷のメインキャンパスと1・2年生の厚木キャンパス、理工学部の世田谷キャンパスがあったが、距離が離れているため大変不評であり、世田谷キャンパスと厚木キャンパスを売却した。そして、その売却益でハード面では新しい建物を建てたのを機に、ソフト面では青山スタンダードをスタートした。これは、6学部を横断してできた科目であるが、スタートから2年たっても出来上がらないのが英語と第2外国語である。今後、「大学に入れた以上これぐらいは保証しなくてはならない」ということから「6学部の英語教育の最低限の到達目標を社会に公表する」という提案をおこなう予定だが、文学部では TOFEL480程度を考えている。他校の例ではICUでは語学教育での入口480、2年間の集中訓練で伸ばして平均530となっており、これは相当高い数字である。英米文学科では年々帰国子女が増えていることもあり、2003年度は入口でTOFEL485であった。しかし、大学英語教員の大部分は英語教育のプロパーではないため、これを一気にやるのは難しく3年計画でやろうとしている。しかし、2003年度から始まった「英語を話せる戦略構想」では、6万人の公立英語教員に研修を開始しており、その指導を受けた生徒が大学2年に上がってくる2008年には、文科省は各大学に「貴大学ではTOEIC何点、英検準1級、TOFEL何点に到達している学生が何名いるか。」との通達を出すと思われる。そうなると、この到達目標は各大学とも出さざるを得ない状況になるであろう。

補足:鳥飼玖美子

文部科学省では、今年から「特色のある大学教育」に伴って「現代的教育ニーズを支援するプログラム」で努力した大学には補助金を出すようになり、そのカテゴリーの大きなテーマのひとつが「仕事で使える英語人を育成している大学」である。そして、青山学院では、青山スタンダードでこれまで縦軸を整備し、これからは横軸の整備をおこなうようだが、立教では1997年に全学共通カリキュラムという横軸における改革をおこなったが、今後は縦軸の整備に入ることになっている。

自由質問2

質問1

香蘭女学校では中・高6年間の中で、英語に期待を持って中学に入ってきた生徒が、中2になると好きと嫌いに分かれていくようになる。中学2年の時点で子供達に興味を持たせるような素材を教科書から離れたところからとることは可能なのか。また、高校受験がないためか、高1になると高校の授業が急に難しくなったと感じるようだが、2-2-2制で考えるとすると中3から高1への移行時に、急に難しくなったという意識にならないような教材あるいは指導法があれば教えて欲しい。

回答1

青山学院では、子ども達の発達段階にあわせての教材改革を始めているが、2003年度青山学院児童生徒の英語学習におけるトピックごとの関心事は以下のとおりである。

小学校4年生 (1)スキー (2)コンピュータ (3)インターネット (4)映画 (5)オリンピック (6)テニス (7)キャンプ (8)旅行 (9)宇宙旅行
小学校5年生 (1)コンピュータ (2)インターネット (3)映画 (4)神様のこと (5)旅行 (6)スキー(7)テレビ (8)自然 (9)宇宙旅行
小学校6年生 (1)インターネット (2)コンピュータ (3)映画 (4)テレビ (5)旅行 (6)スキー (7)趣味 (8)流行歌 (9)オリンピック
中学校1年生 (1)友人 (2)映画 (3)テレビ (4)インターネット (5)コンピュータ (6)音楽 (7)サッカー (8)旅行 (9)オリンピック
中学校2年生 (1)映画 (2)趣味 (3)音楽 (4)ポピュラーソング (5)テレビ (6)アルバイト (7)友人 (8)旅行(9)オリンピック (10)心理
中学校3年生 (1)映画 (2)趣味 (3)音楽 (4)テレビ (5)アルバイト (6)職業 (7)友人 (8)ポピュラーソング(9)ファッション
高校1年生 (1)映画 (2)ファッション (3)音楽 (4)趣味 (5)アルバイト (6)テレビ (7)ポピュラーソング (8)職業 (9)心理
高校2年生 (1)映画 (2)ファッション (3)心理 (4)音楽 (5)テレビ (6)アルバイト (7)ポピュラーソング (8)恋愛 (9)犯罪
高校3年生 (1)映画 (2)アルバイト (3)ポピュラーソング (4)趣味 (5)心理 (6)犯罪 (7)旅行 (8)買い物 (9)ファッション

教材改革の中でこれらのテーマをとりいれていくことも必要ではないか。

自由質問3:古平領ニ(新座中・高校)

質問1

(1)何故英語教育をすべての日本人にしなくてはいけないのか。

(2)大学は入ってくる学生に対してどの程度の英語力を必要としているのか。

(3)英語が必要であるならば英語学校等もあるが、学校教育における英語とはどのように考えるか。

回答1

全ての日本人に英語教育が必要なのかという点については、青山学院に入ってきた学生へのアンケートによると、「英語学習には自信がないが、英語を使えるようになりたい」と答える学生は多い。教える価値があるかないかではなく、身につけたいと考えている学生は非常に多い。また、英語は使えるといいという意識が子ども達の中にも芽生えてきている。教育者としてこれをどのようにとらえるのか。私は本当に欲しいと思っているのであればそれを保証してあげたい。中高教員時代の調査では、中1の時に英語が好きだという生徒は85%であったが、年度の終わりには10%ぐらいは下がった。ところが、「英語学習はつらいが、英語は使えるようになりたい」という生徒は多かった。望む者に対して答えるのは教育の大きな仕事ではないか。

質問2

生徒の需要はかなり違うのではないか。自分の生徒でも英語のテストの点は悪いが、留学のプログラムになると積極的に参加するとか、英語の音楽が好きだとか、英語をしゃべりたいし、聞きたいしという生徒は多い。

回答2

学校教育の中で育てていく英語教育とは何か。まだ結論はでていない。現在セーフティネットがいろいろなところで使われているが、大学3年生へ出した「語学教育で最も影響を与えた人をひとり上げる」というアンケート調査の結果がでたが、1番は中学高校の先生がこれまでと同様に動かなかったが、昨年度はじめて2番に父親が入った。これは海外体験がふえてきたことが大きな要因であるが、家庭環境内における英語力では国際交流が進んでいるかいないかの影響が大きい。また、幼稚園での英語の出会いも中途半端ではなくなってきている。

自由質問4:戸村潔(新座中・高校)

質問1

立教の場合、大学1年次に全カリにおいて集中的に英語を勉強するが、受験勉強を経て難しい入試問題を突破して入学してきた学生と、関係高校のように学校教育の英語のみで入学してくる学生とでは、そのような教育にぶつかった時にどのような歩みをし、どのような成績をおさめているのか。

回答1

内部進学者が大学に入ってからどのような成績をおさめているのかというデータ収集はこれまでおこなってこなかったが、現在、学院の教学運営委員会にて追跡調査実施が検討されている。また、立教大学の全学共通カリキュラムでは、入学時に、授業をゆるやかな進路別に組むためと、コミュニカテブコースと言語文化コースの授業希望をとるということで、全学生にプレイスメントテストをおこなっている。自分のこれまでの指導経験からは、小学校からきている生徒は極端にその評価が別れる傾向にあり、受験という洗礼を受けていないこともあり、自分のいいところを伸ばしてきたことをプラスに転化している学生もいる。したがって、プレイスメントテストの結果だけではなく、長い目でその成果をみていくことが大事であると思う。

自由質問5

質問1

立教女学院短大の定員は400名弱であるが、立教女学院高校からの入学者は10名前後である。このような状況で一貫連携をどのように考えたらいいか。

回答1

青山学院短大でも高等部から進学してくる学生は非常に少ない。現在、英語教育研究センターの中に短大の教員が3名おり英語のプロジェクトにも参加しているが、短大学生のトップ10は青山学院の4年制に編入しており、11番目、12番目は1年浪人して外大、東大に再入学している。短大からは編入学定員を多くして欲しいという要望も出ているが定員もあり難しい。従来からの改革はいろいろと考えられるが、2年制の短大のあり方が果たしていいのか、他の学部との統合をはかるとかの新しい理念がない限り、現存の組織そのままでの発展は難しいのではないか。

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